第8回 日本電信電話株式会社NTT人間情報研究所サイバー世界研究プロジェクト研究主任 山口 真理子様

研究者になったきっかけを教えてください。
幼いころから見てきた映画や小説の中にある、ヴァーチャルな世界でのコミュニケーションを実現したかったからです。スターウォーズのワンシーンにあるような360度から見える空中映像でのコミュニケーションは当時は実現できていなかったので、それを実現させるためにはどうしたらよいのかを考えたときに研究者という選択肢が生まれました。

YRPではどんな研究を進めているのですか。
今はメタバースにかかわる部署で、リアル世界のセンシングと再現についての研究を行っています。直近だとハイパースペクトルカメラで撮影した素材と光の情報からシミュレーションを行い、現実世界で見える色を変化させるスペクトルを計算するようなことをやっていました。メタバースの範囲とは少しずれはするんですが、ありがたいことに先日のパリコレクションのファッションウィークの場で実証させていただきました。将来的には人間が虫や蝶の視覚を仮想的に体験できるような、新しい経験を作り出すことを見込んだ研究です。

仕事を進める上で大事にしていること、モットーなどを教えてください。
一人で進められる研究には限界があるため、チームのみんなや、時には別研究所の仲間や、外部の専門家などの意見を聞きながら進めていくことが多いので、コミュニケーションを図るということを一番大事にしております。自分の言いたいことを伝えることと、相手の意図とのすり合わせを行うことも大事にしています。

これまで仕事していて楽しかったことや、逆に難しかったことを教えてください。
新しい知識が常に必要になることが楽しいことですが、一方で難しい面もあります。入社した時はオリンピックにかかわる画像処理の研究をしており、今は万博に向けたチームでハイパースペクトルカメラの研究をしています。でも大学の時は物理演算下のバーチャルキャラクターのモーション自動生成などをやっていたので、画像処理の研究は全く新しい分野への挑戦でした。新しいことを吸収していくことは楽しいことではありますが、その反面、壁に当たりがちなので大変な面もあります。 
思い出という点では、入社1年目の頃、チームで内容もプログラムもゼロから作り上げ、初めてリアルタイムのショーで、お客様の前で使われたときのことは今でも鮮明に覚えています。冬の寒い体育館の中でしたが、チームでやり切った!という感動を覚えています。
ニコニコ超歌舞伎での中村獅童さんの切り抜きをしていたときも、エンディングの千本桜が流れたときにすごく感動したのを覚えています。ネットの画面の向こうで見ているユーザーの人、バーチャルの中の初音ミクさん、そして現場で盛り上がっている観客や獅童さんたちが一体となっていた感覚は、自分の目指す一つの形だとずっと心に思っています。

勤務地(居住地)である横須賀について思うことはありますか。
就職をきっかけに横須賀に住むようになりました。もともと山育ちなので、海に面している横須賀ははとても良い場所で、テンションが上がります。東京で大雪警報が発令されるような時でも、横須賀は小雨だったりなど、天候に恵まれていると思います。
御飯もおいしいです。海の幸・野菜はもちろんですけど、個人的には海軍カレーが大好物です。横須賀に来て初めてカレーを外で食べるようになりました。
お気に入りのすし屋さんやカレー屋さん、ハンバーガー屋さななどを増やしては友人を呼んで観光してます。猿島やうみかぜ公園のキャンプ、温泉も楽しんでます。なんといっても私の一番の押しは軍港巡りです。観光場所から少し離れた所に広い駐車場があるので、とても便利です。
京浜急行電鉄のおかげで都内まで1時間程度なのでよく遊びに行きます。

YRPで働いていて思うこと(良い点、改善した方が良い点など)があれが教えてください。
まずは、皆さんも言っている通り自然豊かである点はYRPならではの良い点だと思います。道が広いので車で走るのが気持ちいいです。これは通信研究所の良い点だと思いますが、天気が良い日は富士山が見えることです。もともと通信研究所が出来たのは無線電波の研究のためであり、そのため山の上に建てたと聞いていますが、そのおかげで、今も何物にもさえぎられることなく富士山が見えます。出社した日は窓から富士山がみえるかチェックします。夕日を背景にした富士山は非常に壮観です。
あとは生活面では、YRP野比駅前の京急ストアが22時まで営業しているので、大変助かっています。仕事終わりにいつも利用しております。
改善点は、バスの本数が減ってしまったことです。通信研究所はバスの終点なので、終バスの時間が早くなってしまったので困っています。もっと多くの企業や学校などが集まれば、地元のお店などもより活性化していくのではないかと思うので、集積活動を進めていただければと思います。

今後の抱負や目標などを教えてください
まずは目の前の大阪万博を乗り切ることです。チームや部署の人々が全力で取り組んでいますので、できる限りサポートしていきたいと思います。その後も、研究者としてまた新しくて面白いことにチャレンジできたらなと思っています。